召しませ春を
啓翁桜
山形県から一足早い春を運ぶ『冬のさくら』で広く知られている「啓翁桜」。山形県では、昭和40年代に全国にさきがけて促成栽培が始まりました。ハウス(促成室)の中で寒さと暖かさを調節しながら、真冬の開花を促します。
お正月の飾りとしてのホームユースや、様々なイベントのフラワーアレンジメントの花材として人気が高まっています。
「啓翁桜」の苗木を植え付け、花芽が十分に着生した枝になるまで、数年かけて露地で栽培します。
それまでの間は、生育を邪魔する雑草の草刈りや、病気と虫がつかないよう防除してしっかりと管理します。
秋には縄などで樹を結束し、冬の雪から樹を守ります。3~4年経過すると花芽も多くついて出荷出来る大きさまで成長します。
花芽(はなめ)がしっかり付いた枝まで成長すると「枝切り」を始めます。落葉してから雪が降る11月~12月までの間、枝を畑から切り出し、乾燥しないように冷蔵庫や日の当たらないところに立てておきます。
出荷規格の長さや太さに合わせて切りそろえ、紐で結束して促成室に搬入します。
秋の訪れが早い山形県だからこそできる促成栽培。促成室内では、結束した枝を水の入った容器に入れ、花の色が濃いピンクとなるよう、細心の注意をはらった温度・湿度管理を行います。
促成室で開花を待つ「啓翁桜」の蕾。ピンク色の蕾が大きく膨らんだら、いよいよ全国に向けて出荷されます。
「啓翁桜」の枝物は、早春を告げる花材として、正月の迎春花などに人気です。
「啓翁桜」のつぼみが開花すると、薄紅色をしたボリューム感のある花が綺麗に咲きそろって、明るい華やかさを演出してくれます。
また、枝がスプレー状になるため、現代的なフラワーアレンジにとても適しています。
「啓翁桜」は昭和5年、福岡県久留米市山本の吉永啓太郎氏が、中国系の「ミザクラ」を台木にして「ヒガンザクラ」を接いだところ、穂木として使った「ヒガンザクラ」から、その枝変わりとして発見されたものです。命名者は久留米市の研究家、弥永太郎氏で、吉永氏の名前の一字をとって「啓翁桜」と命名しました。